所長からの今月のひとこと【㉜】~実際にあった労働相談より~

第32回は、日頃の労働相談で最も多く解決が難しいパワーハラスメントの「事業主の措置義務」についてご案内します。

「労働施策総合推進法」(通称パワハラ防止法)では、「会社(事業主)が自主的に解決するもの」とされており、今後改正法の施行が予定されている「カスタマーハラスメント」も同じ考えに基づいてます。

会社はパワーハラスメントを放置していると、民事上の安全配慮義務違反に基づく損害賠償を請求されたり、会社の評判を著しく落とし経営難に陥る可能性もあるので、十分な対策が必要です!

パワハラの定義

労推法では、「優越的な関係を背景とした言動であり」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもので」「労働環境を害するもの」であり、その全てを満たすものとされています。

セクハラと違い、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」の判断が非常に難しいです。

事業主の措置義務

  • 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  • 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること
  • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること(中小企業では窓口が設置されていないケースがまだまだ散見され、私たちが都道府県労働局長の助言指導を実施する場合も、この点を指摘する場合が非常に多い)
  • 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるよう にすること(3.に同じ)
  • 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  • 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  • 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
  • 再発防止に向けた措置を講ずること (事実確認ができなかった場合も含む)←これがされていないケースも非常に多い
  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、 その旨労働者に周知すること
  • 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

労働者が事業主に相談したこと等を理由として、事業主が解雇その他の不利益 な取り扱いを行うことは、労働

施策総合推進法において禁止されています。

「措置義務違反」に関しては、悪質な場合、企業名公表まであり得ます。

コロナ禍以降、コミュニケーション不足から、上記の労災認定をみても、非常に件数が増えています!

再度、見直しをして体制の整備をしましょう。会社の命取りになりかねません!