所長からの今月のひとこと【⑰】~実際にあった労働相談より~

第17回は、「労働条件明示のルール変更について」です。

令和5年3月「労働基準法施行規則」が改正されました。

これにより、令和6年4月からの「労働条件通知書」について、新たな項目が
明示事項として追加されました。

「労働条件通知書」は、労働者の労働条件保護という側面もありますが、事業

主様にとっても、無用な労使間トラブルを避け優秀な人材を確保するという観

点から、非常に重要な書類です。

罰則もありますので、あらためて今回の法改正のポイントを含め確認しておきましょう!

「罰則」

新たに人を雇い入れた際、並びに、有期契約を更新する際、「労働条件通知書を交付しないと、労働基準法違反として罰則があります。
違反すると、30万以下の罰金が科せられます。(労働基準法120条)
「安い」と思われるかもしれませんが、これは「刑事罰」で企業の信用失墜にもつながりかねないので、安易に考えるべきではありません。

最近は、労働者からの労働基準監督署への問い合わせが増えているそうです。

賃金のトラブルになった時などには、会社側が不利になってしまうこともありますのでご注意ください。

「今回の法改正のポイント」

①「就業場所・業務の変更の範囲の明示」

雇い入れ直後の就業場所・業務に加え、就業場所・業務の「変更の範囲」の明示が必要となります。

有期労働契約の場合は、更新後想定されるものは含まれません。

又、派遣元事業所様等のように、変更の範囲が不明な場合は、「会社が指定する場所」等としてください。

②有期労働契約で働く方に対して、

「更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容の明示」

「更新なし」の場合は記載不要です。更新の上限を通知後に新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ(新設・短縮する前のタイミングで)説明することが必要になります。契約の当初から数えた更新回数または通算契約期間の上限を明示し、そのうえで現在が何回目の契約更新であるか示すようにしてください。

③「無期転換申込権」が発生する有期労働契約の契約更新のタイミングごとに、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示に加え、(1)無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示+(2)無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

労働条件に関しては、更新時に労働条件が固まっていない場合は、いつどのような方法で決定するか記載してください。(原則は、他の通常の労働者とのバランスを考慮する必要がありますが、有期労働契約の時と同一条件となります)

又、無期転換申込権を行使しない旨を表明している有期契約労働者に対しても明示を行う必要があります。

昨今、「雇止め」時のトラブルが非常に多くなってきていると聞き及んでいます。

今回の改正もそれを踏まえた改正となっています。

今回の改正を機に、専門家のアドバイスを受けながら、改めて「労働条件」の見直しをされてはいかがでしょうか?