所長からの今月のひとこと【④】~実際にあった労働相談より~
第4回目は、昨年の労働相談で一番複雑で、件数も多かった印象がある「雇止め」に関してです。
一番驚いたのは、雇用契約時に「労働条件通知書」が交付されていないケースが非常に多いという事です。
雇用契約は口頭でも成立し、書面は必須ではありませんが、「労働条件通知書」は労働基準法第15条により、
必ず交付しなければなりません。違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられます。雇止め等のトラブルの時も問題になりますので、必ず交付するようにしましょう!
❶雇止めと解雇は違う
雇止めは、「期間の定めのある労働契約(有期契約)」の際に行われる労働契約期間満了時に更新しないことによる労働契約の終了。
解雇は、有期無期の区別なく、労働契約継続中に、使用者による一方的な労働契約の終了。
❷有期の契約中は、労働者側も使用者側も、「やむを得ない事由」がなければ、契約を終了させることはできない
労働契約法第17条により、「期間の定めのある労働契約」は「やむを得ない事由」がなければ、労働契約の途中で労働契約を終了させることはできません。「やむを得ない事由」は、単なる経営上の問題等では足りず、「事業所が焼失した」等通常の解雇より「解雇権の濫用法理」に関し、より厳格に判断されます。
労働者は、「期間の定めのない労働契約」においては、退職2週間前までに退職の意思表示をすれば、2週間経過後はいつでも辞められますが、「期間の定めのある労働契約」の場合、当分の間、1年超の契約で1年経過後でなければ自由な退職は認められていません。
❸長期間・複数回更新されている有期の労働契約は要注意!
労働契約法19条では、「無期労働契約の解雇と社会通念上同視出来る場合」「契約が更新されると期待されることに合理的な理由が認められる場合」は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合雇止めは無効」とされています。
判断の基準に関し、
a 労働契約が臨時か常用か b 更新の回数 c 雇用の通算期間 d 契約期間の管理状況 e 雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無等 労働契約が継続しているあらゆる事情を考慮して判断する。
とされています。
雇止め無効とされると、従前と同一の労働条件で、有期労働契約の更新又は締結の申し込みを承諾したものとみなされます。
別の機会に、又、触れますが、「契約期間を通算した期間が5年を超える場合」の無期転換ルールにおいても、無期転換逃れとされるケースがありますので、雇止めには細心の注意を払ってください。最近の判例では「手続き」が重視される傾向にありますので、更新時の説明等には十分注意を払ってください!
<参考>雇止め予告(解雇予告手当は不要、請求に応じ雇止め理由を明示)
3回以上又は1年を超えて更新されている場合、30日前までに「雇止め予告」が必要