所長からの今月のひとこと【㊲】~実際にあった労働相談より~
第37回は「これから予定されている労働基準法40年ぶり大改正の方向性」についてです。
🧭 全体像:今回の大改正が目指す方向性
• 過重労働の防止(連続勤務・休息時間の明確化)
• 休日・休暇ルールの透明化
• 副業・兼業やテレワークなど多様な働き方への対応
• デジタル時代の新しい権利(つながらない権利)整備
• 特例措置の見直しによる労働時間規制の統一
これらは、1980年代以降の働き方の変化に法律が追いついていないという問題意識から生まれています。
📌 主要7ポイント(議論されている改正案の要点)
1. 連続勤務の上限規制(14日以上の連勤禁止)
• 最大 13日連続勤務まで に制限。
• 管理監督者も対象に含める方向。
2. 勤務間インターバル制度の義務化(11時間以上の休息)
• 終業から次の始業まで 原則11時間 の休息を確保。
• EU諸国で一般化している制度を日本でも義務化する流れ。
3. 法定休日の特定義務の明確化
• 「週1日の法定休日」を 就業規則で明確に特定 することを義務化。
• 現状は曖昧な運用が多く、コンプライアンス強化が狙い。
4. 有給休暇の賃金算定方式の一本化(通常賃金方式へ)
• 現行の複数方式(平均賃金・標準報酬など)を整理し、「通常賃金方式」へ統一 する方向。
• 実務の簡素化と透明性向上が目的。
5. 副業・兼業者の労働時間通算ルールの見直し
• 複数事業場で働く人の労働時間をどう通算するかを再整理。
• 割増賃金の負担をどの企業が負うかなど、実務上の混乱を解消。
6. 週44時間特例措置の廃止(実質40時間制へ統一)
• 商業・サービス業などに残る「週44時間特例」を廃止し、すべての企業を週40時間へ統一。
7. 「つながらない権利」ガイドラインの策定
• 勤務時間外のメール・チャット対応を求められない権利を明確化。
• テレワーク普及に伴う“常時接続”問題への対策。
企業側の実務への影響は、「人件費・労務管理・システム・就業規則・リスク管理」の5領域で大きく発生します。特に今回の改正案は、連続勤務・インターバル・休日特定・副業通算など、勤怠管理の根幹に関わるため、企業の負担は相当大きいと見込まれています。
🧩 1. 人件費への影響(最もインパクトが大きい領域)
● 休息時間・休日の厳格化によるシフト再編
• 連続勤務の上限(最大13日)や勤務間インターバル11時間が義務化されると、現行のシフトが組めなくなる業種(小売・飲食・介護・物流)が多数。
• 代替要員の確保が必要になり、人件費の増加が避けられない。
● 割増賃金の増加
• 副業・兼業者の労働時間通算ルールが見直されると、どの企業が割増賃金を負担するかが明確化され、負担増の可能性。
🕒 2. 勤怠管理の複雑化(システム改修が必須)
● 勤務間インターバルの自動管理
• 終業→次の始業まで11時間空いているかを自動チェックする機能が必要。
● 法定休日の特定管理
• 「週1日の法定休日」を就業規則で明確に特定する義務が生じるため、休日の設定・変更がシステム上で厳密に管理される必要がある。
● 週44時間特例の廃止
• 小売・サービス業で残る「週44時間特例」が廃止されると、全事業場で週40時間管理が必須になり、勤怠設定の見直しが必要。
📘 3. 就業規則・雇用契約の大幅改訂
● 改訂が必要な主な項目
• 法定休日の特定
• 勤務間インターバル制度
• 連続勤務の上限
• 副業・兼業の労働時間管理
• 有給休暇の賃金算定方式(通常賃金方式への統一)
これらは就業規則の根幹部分に関わるため、改訂作業は大規模になります。
🖥 4. テレワーク・管理職への影響
● 「つながらない権利」への対応
• 勤務時間外のメール・チャット対応を求めない運用が必要になり、テレワークの管理ルールを再構築する必要がある。
● 管理監督者も規制対象に
• 連続勤務の上限などは管理職も対象となる方向で議論されており、管理職の働き方改革が避けられない。
⚖️ 5. コンプライアンスリスクの増大
● 違反時のリスク
• 法定休日の特定義務違反
• インターバル未確保
• 連続勤務の上限超過
• 副業者の労働時間通算漏れ
これらは労基署の是正勧告・罰則につながる可能性が高く、企業のリスク管理がより重要になります。
🧭 企業が今から準備すべきこと(実務ステップ)
1. 現状分析
• 連続勤務・インターバル・休日設定の現状を棚卸し、副業者の管理状況を確認
2. 制度設計
• 就業規則の改訂方針を決定
• 管理職・現場との調整
3. システム改修
• 勤怠システムの改修(インターバル・休日特定・週40時間統一)
• 副業者の労働時間通算機能の整備
4. 社内周知・教育
• 管理職研修
• 従業員説明会
• テレワークルールの再周知
🎯 まとめ:企業にとっての本質的な影響
今回の大改正は、
「人を増やすか、働き方を変えるか」という経営判断を迫る内容です。
• シフト再編
• 勤怠管理の高度化
• 管理職の働き方改革
• テレワークの再設計
これらが同時に求められるため、中小企業ほど影響が大きいと専門家は指摘しています。

