所長からの今月のひとこと【㉓】~実際にあった労働相談より~

第23回は「労働契約終了のルール」についてです。

自民党総裁選において、「解雇規制の緩和」が話題になりました。なかでも、「整理解雇の4要素」の内「解雇回避努力」が、「リスキリング」とセットで論じられたようです。これからも、「労働市場における流動性確保」の観点から、「解雇」に関して話題に上ると思いますので、「労働契約終了のルール」についておさらいしておきましょう!

1.使用者には「解雇」する権利がある。

労働契約法では、第16条で、使用者には解雇することが認められています。

「解雇」は

・客観的に合理的な理由を欠き

・社会通念上相当であると認められない場合

「その権利を濫用したものとして、無効とする」

とされています。

よく、「不当解雇」という言葉を口にされる方がいますが、解雇が不当か否かは、裁判所が司法判断を下して初めてはっきりするのです。

2.「退職勧奨」は「解雇」とは違う

退職勧奨も、「労働契約を終了させる」一つの方法です。

退職勧奨は、使用者が労働者に対し「辞めてほしい」「辞めてくれないか」などと言って、退職を勧めることをいいます。これは、労働者の意思とは関係なく使用者が一方的に契約の解除を通告する解雇予告とは異なります。

「退職勧奨」であれば、労働者側は応じる義務はありません。

「解雇」であれば、「解雇予告(手当)」「解雇制限」等の問題が使用者側に生じます。

退職勧奨は、使用者側に認められている行為ですが、繰り返し執拗に行われる退職勧奨は「ハラスメント」と認定される可能性があり、又、使用者による労働者の自由な意思決定を妨げるような退職勧奨は、違法な権利侵害に当たるとされる可能性があります。

多額の損害賠償を請求される余地があるので、行う場合は慎重に進める必要があります。

3.労働契約に「期間の定めがある場合」

期間の定めのある労働契約(有期労働契約)については、あらかじめ使用者と労働者が合意して契約期間を定めたのですから、使用者は「やむを得ない事由」がある場合でなければ、契約期間の途中で労働者を解雇することはできないこととされています(労働契約法第17条)。そして、期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。余程の理由(例えば、事業場が壊滅的な損害を受け事業が継続できない場合等)がないと「契約期間中の解雇は認めてもらえない」と思っておきましょう。

有期労働契約においては、契約期間が過ぎれば原則として自動的に労働契約が終了することとなりますが、3回以上契約が更新されている場合や1年を超えて継続勤務している人については、契約を更新しない場合、使用者は30日前までに予告しなければならないとされています(「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」<厚生労働省告示>)。

また、反復更新の実態などから、実質的に期間の定めのない契約と変わらないといえる場合や、雇用の継続を期待することが合理的であると考えられる場合、雇止めをすることに、客観的・合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められないときは、「解雇権の濫用法理」が準用され、従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになります。(労働契約法第19条)

新たな労働条件通知書に署名捺印を求めるだけ等の形式的な更新手続きは避け、更新の度に、事前に、更新がされない場合がある旨等の説明をした上で、労使双方合意して更新する必要があります。

4.最後に

「労働基準法」上の「解雇制限」を再度確認しておきましょう。

・業務上の傷病による休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)

・産前産後の休業期間及びその後30日間の解雇(労働基準法第19条)

・国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)

・労働基準監督署等に申告したことを理由とする解雇(労働基準法第104条)

以上の解雇は認められていません。

また、労働基準法第20条で、

「使用者は労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも30日前に予告しなければならない」とされており、「30日前に予告しない使用者は、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならない」とされています。

解雇予告手当を支払わない場合は、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科されるばかりでなく、裁判所から同一額の「付加金」の支払いを命じられる可能性があります。