所長からの今月のひとこと【㉒】~実際にあった労働相談より~
第22回は「フリーランス新法」をご案内します。罰則付きですので、事業主様は早めの対応をお勧めいたします。
1.「フリーランス新法(以下本法といいます)の概要」
(内閣官房・公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「ここからはじめるフリーランス・事業者間取引適正化等法」参照の上抜粋)
❶目的:取引の適正化・就業環境の整備
❷フリーランス新法の対象:
対象となる事業者
フリーランス:「特定受託事業者」
業務委託の相手方である事業者であり、次の①、②のいずれかに該当するもの
①個人であって、従業員を使用しないもの
②法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの
従業員を使用とは、1週間の所定労働時間が 20 時間以上かつ 31 日以上の雇用が見込まれる労働者を雇用することです。
発注事業者 :
「業務委託事業者」
フリーランスに業務委託をする事業者。これには、フリーランスも含まれます。
「特定業務委託事業者」
フリーランスに業務委託をする事業者であって、次の①、②のいずれかに該当するもの
①個人であって、従業員を使用するもの
②法人であって、役員がいる、または従業員を使用するもの
対象となる取引
事業者からフリーランスへの委託、つまり、「B to B 」が対象。
業務委託ではなく、単なる商品の販売行為は対象外です。
要注意: 形式的には業務委託契約を締結している者であっても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には、労働基準関係法令が適用され、 本法 は適用されません。
対象となる取引の内容
本法の適用対象には、業種・業界の限定はありません。発注事業者からフリーランスへ委託する全ての業務が対象となります。
POINT : 本法と下請法(下請代金支払遅延等防止法)との違い
下請法では、親事業者が資本金1000万円を超え、下請業者が資本金1000万円以下の場合にしか下請法は適用されません。
対して、フリーランス新法では、資本金による制限がありません。
又、下請法では、建設業法における建設工事は対象外ですが、本法は業種・業界の限定がないため、建設工事も「業務委託」の対象となります。
❸義務と禁止行為
本法の規制は、「取引の適正化」と「就業環境の整備」の2つのパートで構成され、適用される義務と禁止行為は次のとおりです。
取引の適正化
取引条件の明示義務
期日における報酬支払義務
発注事業者の禁止行為 (・受領拒否の禁止・報酬の減額の禁止・返品の禁止・買いたたきの禁止・購入、利用強制の禁止・不当な経済上の利益の提供要請の禁止・不当な給付内容の変更、やり直しの禁止)
就業環境の整備
募集情報の的確表示義務
育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
ハラスメント対策に係る体制整備義務
中途解除等の事前予告・理由開示義務
他に、一定期間以上の業務委託のみにかかる義務と禁止行為があります。
「取引の適正化」は、主に、公正取引委員会並びに中小企業庁が所管し、「就業環境の整備」は、主に、厚生労働省が所管します。
「フリーランス新法」は「下請法」「労働法」がベースとなって作成されていると思われます。
❹最後に
違反行為への対応
皆様が一番気になる点だと思いますが、以下のようになっています。
フリーランスは、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省に対して、発注事業者に本法違反と思われる行為があった場合には、その旨を申し出ることができます 。
行政機関は、その申出の内容に応じて、報告徴収・立入検査といった調査を行い 、発注事業者に対して指導・助言のほか、勧告を行い、勧告に従わない場合には命令・公表 をすることができます。命令違反には50万円以下の罰金があります 。
発注事業者は、フリーランスが行政機関の窓口に申出をしたことを理由に、契約解除や今後の取引を行わないようにするといった不利益な取扱いをしてはなりません 。
法施行後の実効性を担保するために、各行政機関が集中的に取り組むことが予想されます。皆様におかれましては、法を熟知し、社内の取引を総点検した上で、早めに「契約書の変更」等の準備をすることをお勧めします。