所長からの今月のひとこと【⑱】~実際にあった労働相談より~

第18回は、コロナ明け対人関係のミスマッチからおこる「休職」の問題に欠かせない「傷病手当金」をおさらいしましょう!
「傷病手当金制度」

傷病手当金は、被保険者の生活を保障するために設けられた健康保険の制度で、被保険者の方が業務外の事由による病気やケガのために仕事を休み、会社から給与を受けられない場合に支給されます。 また、給与を受けている場合は、傷病手当金の日額と給与の日額で比較し、傷病手当金が上回った場合は、差額が支給されます。

「支給条件」

次の4つの条件を満たす必要があります。

  • 業務とは関係のない病気やけがのため療養中であること
    …業務中の病気やけがは「労災保険」の対象です
  • 仕事に就けないこと(医師が労務不能と認めた場合)
    …よって、失業手当とは同時に受給できません。(失業手当は仕事をすることができるのに職に就けない人がもらう手当だからです)
  • 3日「連続」して仕事を休み、4日目以降も休んだ日があること。
    …3日連続して休んだことを「待期期間」といい、4日目から支給されます。「待期期間」には、「年次有給休暇」や「公休日」も参入できます。
  • 会社から報酬(給与)の支給がないこと。
    …給与の支払いがあっても傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。3か月を超えて支給される「賞与」は報酬に含まれません。

「傷病手当金の支給期間」

令和4年1月施行の法改正で、同じ原因の傷病について、支給開始日から「通算して」1年6か月となりました。

支給期間中に途中で就労するなど、傷病手当金が支給されない期間がある場合には、支給開始日から起算して1

年6か月を超えても、支給の対象になります。

「傷病手当金の支給日額」

1日あたりの金額=支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)

支給開始日以前の期間が12か月に満たない場合

㋐㋑のいずれか低い額を算定の基礎とします。

㋐支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額

㋑30万円(当該年度前年度9月30日における全被保険者標準報酬月額の平均)

「支給期限」
労務不能であった日ごとにその翌日から2年

「傷病手当金の支給額の調整」
①~④のような場合、傷病手当金の金額が調整されます。

①事業主から給料の支払い(報酬)を受けた場合
②傷病手当金と出産手当金の両方が受けられる場合
③資格喪失後に老齢厚生年金や老齢基礎年金、退職共済年金を受けている場合
 (資格喪失後の給付の場合のみです)
④傷病手当金と同一の疾病による障害厚生年金、障害手当金を受けている場合

「傷病手当金の資格喪失後の継続給付」
次の①と②の両方の要件を満たすことが必要です。
①退職日までに被保険者期間(協会けんぽ・健康保険組合における被保険者期間)が継続して1年以上あること(任意継続被保険者期間、国民健康保険期間は除く)
②退職日に傷病手当金の支給を受けているか、または受けられる状態にあること
退職日に出勤しているともらえなくなるのでご注意を!

「申請の流れ」 

まず、対象従業員から「療養担当者の証明」をもらってもらう。

次に、対象労働者の「出勤簿」「賃金台帳」を準備する。

最後に、「被保険者証の情報」「振込先指定口座」を添えて、社労士に依頼する。

休職期間中は「ノーワークノーペイ」の原則で給与の支払いは不要ですが、社会保険料の負担は休職前の額でかかってきます。優秀な人材を失わないためにも、ぜひ手続きにご協力してあげてください。